




ラナンキュラスが
咲きました
春の陽気に誘われて
その日記を開きます
一ページ目 種でした
二ページ目 二葉でした
三ページ目 本葉でした
百ページ目 我が家に来ました
葉脈に水を蓄えるたび
思いで日記は膨らんで
とうとう丸い花になりました
大切な思いは欠かさず書きました
たくさん たくさん 書きました
まだまだ書きたいけれど
ラナンキュラスは少しだけ
年をとってしまいました
思い出を書きこんだ葉脈は
少し筋張って堅く細くなりました
真っ赤だった思いも
少しだけ色あせました
でもラナンキュラスは
あきらめませんでした
まだまだ 書きたいことはたくさんある
小鳥が鳴いたこと
風がそよいだこと
きれいねって言われたこと
大好きよって言われたこと
どれも 宝物ですから
風の強い夜になりました
もう開ききってしまった
ラナンキュラスの日記帳は
一枚一枚風に飛ばされていきました
舞い上がった日記は
もう あなたの手元に届いたでしょうか
最後のページに
幸せです ありがとう
と書かれていた
その日記は