$ 0 0 実家の 大ケヤキは この時期 時雨と 北からの風に ごうごうと唸る 獣の 鳴き声のように 深く 胸をえぐるような 音だ 寝付けない夜は 風雪に折れる枝音まで響き 布団から 飛び起きたこともある そのくせ 元気な日には ごうごうという音が 子守歌に聞こえてくる 鈍色の空が 紫色に稲光り 枕元を照らし 目をやられた私は 閃光の後の 闇に 眼を埋めるのである 泥のように 眠りたまえ 泥のように 明日 冬の蓮が 咲くだろう