双子座
兄は神で 不死だった 弟は人で 死ぬ運命だった 兄は願った 弟にも不死を分けてほしい 神は聞いた 兄の不死の力を半分に分け 夜は天空の不死の世界に 昼は大地の人の世界に 二人を住まわせた 二人の星座の間から 流れ星が落ちる 苦楽をともにすると決めた その宝石の心が 師走の町に落ちてくる 手と手を取り合って 祈ることから 始めよう 昼も夜も 歩みを止めず 今日も明日も 共に生きよう...
View Article辰巳量平のインスタレーション
参加するという形の インスタレーション 辰巳量平 「凡人でごめんなさい」 が 松本市中央3−4−7 ワールド不動産ビルで開催されています。 展示会場は空きビル。 で、まずは入り口がわからない。 重たい戸を開けると そこは階段で 階段を上ると…… 言語にこだわる辰巳の真骨頂は三階のスタイロフォームの造形なのか、 むき出しになった壁と不可思議な証明なのか、 トイレという装置なのか、...
View Articleなにもないようで
なにもないようで なにかがあって うそのようで ほんとうで ほんとうのようで かなしくて うれしくて なにをぬりこめたら このそらが うまるのだろう なにもないようで あふれんばかりの いきをこらしている このおもい
View Article野の道
冬枯れの野に 跳ねてみた なだらかな 光の向こう 銀の鈴音の 四十雀 ヒタヒタ拍子木 キセキレイ なだれて落ちる アトリの群れの 野原の気持ちを詰め込んで 西日の当たる我が家に帰る
View Article再会
ずっと会いたかったのよと 彼女は言って 杯を重ねた 星降る夜の あまりの美しさに 胸を打たれたと 彼女は言って 笑った また会おうよ 近くの滝は 南極の氷山のように 青くなっている あれには 水底から 輝いてくる 力を感じる 写真に撮ってごらんよ 60?の 冬用長靴を買って 会いにおいで
View Article交差点
行き交う人の 見知らぬ顔に 孤独を覚えると 少女はつぶやく 襟を立て 足早に過ぎる人の海を 少女はたたずんで 少女はうつむいて 目を覚ます 一億二千万人のこの国の たった一人の 探している人 きっと出会えるだろう 少女はうなずく いかなくっちゃ 交差点のその先の 交差点への そのカーブを いかなくっちゃ ※ 松本駅
View Articleはこべ
厳寒期に 緑を肥やす あなたは ハコベ はこべ というのだから 願い事を かけてみました はこべ はこべ やってくる 明日に もひとつ はこべ いっとう先に 咲いて魅せます あなたは はこべ
View Articleあした
あした はれても くもっても あめになっても あした しおさいが きこえたら おしえてあげる あした は ひとがつくる ひたひたと うちよせる おもいを つたえたくて あした は ひと と ひと で つくる
View Article深呼吸する森
転がった先で 小石を蹴って 追いかけて また蹴って 小石を 案内人に仕立て 気がつけば グレーテルの森 さあ 薪をくべなさい さあ 雑巾をかけないさい グレーテルは 働きます 小鳥になった ヘンゼルは 小鳥の言葉で 歌います 僕たちは継母に捨てられちゃったけれど 僕たちは捨てないよ そういう大人になるんだ 森が聞いていました いい歌だね ザワザワ揺らめいて ぱっくり開いた空に 森が 深呼吸した...
View Articleお日様とともに
膝をそろえて かしこまって 今日は冬至ですもの お日様を見る 明日からは 日一日 お昼間が延びます 再生されていく 真昼間の時間を 背筋を伸ばして 過ごします 畳一目ずつ 毎日 まいにち 育ちますように 膝をそろえて かしこまって お日様を 眺めました
View Article君のいた場所
その峠を越えたら 君が住む街に出る 曲がりくねった 木々の根に 落ち葉が降り積もった 峠に 今日は雪が降る その峠を越えたら 君が笑った街に出る 幾千のヒールの音が イルミに満ちた 峠に 今日は雪が降る その峠を越えたら 君がつかんだ未来に出る 泣きながら探していた 明日が積もった 峠に 今日は雪が降る
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