日の当たる場所へ
雨が上がった 大木の下で 背伸びだけ上手になった 桜の若木は まだ紅葉もしていない 日が当たらなければ 色づくこともできないんだから 大木が落葉したあとも おまえは緑なんだね 来年はもっと大きくおなりなさいよ 小さな雫を ご褒美にあげる 雪が上がった 背伸びだけ上手になった桜の若木が 色づいていた
View Article庭
狭庭に雪が降る 小さな雪片だから 息をこらして 見上げた 秋の庭の手入れは まだ もうちょっと 薔薇が 選定の時を 待っている 霜に打たれても しおれた花びらを 開こうとしている 熟れ柿の たわわに実る その木の下で 薔薇は 生きることを あきらめない 狭庭に雪が降る
View Article12月の海
12月の海 灰色の海 季節風が 波打ち際の砂塵を運び 目を開けていられない 鼻から息を吸うのだって 難しかった 口を小さく開けて 汁を吸うように 呼吸した ざらざらと しょっぱくて 甘くなっていく 砂塵が口を襲う なにもあきらめない あの日 私は海で誓った あきらめない 諦めるもんか 12月の海 灰色の海 カモメが折れるように 飛んでいた
View Article12月の空
陰っていくひかりが底を打つのは この頃だ 夕方が少しだけ 長くなり 昇っていくひかりは 目覚めが遅くなる 夜の間に 流れていくものを凍りつかせ 朝が清浄に明けるように 闇は悲しみを拭っていく 12月の空 なにもない それでいい それがいい なにもないところから 始めていいと 空が言うのだから 朝が来たら 背を伸ばして叫んでみよう おはよう わたしはここにいる
View Article12月の風
昨日まで隣の席だった転校生は 鼻を垂らしながら 今朝は朝礼台の上にいた おら 転校するだ いままで あんがと 舌っ足らずだけど どこか野太い声で 挨拶をした 風の又三郎だな 良子が背中を突っつきながら 耳元で言った 剣玉をして 木登りをした 勉強はからっきしダメで 体操は満点だった 風は通り過ぎる ざわざわと記憶を揺らす あんまり深く大きく揺れたから 忘れられなくなっちゃいそうだ 12月の風がふく
View Article12月のひかり
故郷に帰りたい あなたはたくさん愛してくれた 私は幸せだった でも 故郷の 南の島の太陽は この北の国にはない ねえ 寒い イザベラの 青白くなった頬は ますます白くなっていく ※ もう 話すことも できないらしい イザベラ おまえに 太陽をあげよう 居間から外した 大きな鏡で 暖炉のひかりを イザベラの顔に届けた 快活だった あの日の肌の色を 浮かべて イザベラは 少しだけ笑ったようだった
View Article12月の夜
粉末オレンジジュースは 丸いカンカンの中に入っていた スプーンいっぱい 水は200CC 今日は隣のミッチャンと ささやかな誕生パーティ おままごとの砂団子 笹舟 オレンジジュース もうお家に帰りなさい あ おかあさんだ 夜が早くなっちゃって 続きはまた明日ね 明日も誕生パーティ 思い出が一つ生まれるたびに ミッチャンと たのしい誕生パーティ 粉末オレンジジュース
View Articleまさか・・・
まさか・・・ と思うほど 嬉しいことがありました。 Canonのphotopressoのトップページに 「おじいちゃんと切手たち」 が掲載されました 昨日 その本は印刷され 手元にやってきたばかりでした 小さな段ボール箱を開けて ワクワクしながら その本を手にとって ああ 本になったんだと ページをめくりました その時だって 十二分に嬉しかったです それを超えた今回のピックアップ・・・ 本当に...
View Articleビレッジ安曇野
黄昏時のサンモリッツを目指したつもりでしたのに もう日は十分に傾いていて 進路変更 ビレッジ安曇野のイルミネーションを見に行きました 黄昏の空に浮かぶ電飾はきれいでした でも…… 行く手を阻む人の影 私がカメラを構えるたび 堂々とその前に三脚を立てて撮影開始 すぐにモニター確認 お疲れ様…… 写真は楽しく撮らなくっちゃ 楽しいこと 大切なこと が 心に残るのですから
View Article12月の夢
バスケットいっぱいの 夢が こぼれ落ちる 12月の夜 夢見た分だけ 大きくなれる だから お父さんが 教えて上げよう 12月に夢見た その夢が 初夢になる 繰り返し 繰り返し 何度も夢見て こぼれ落ちていくほど おまえの夢が大きくなった時 もう大丈夫 どこまでだって 歩いて行ける
View Article定点観測地点
一週間に一度ほど この小さな池に遊びに行って 空を眺めてきます まっすぐ空だけを見ればいいのに 水に映り込んだ空が 好きなのです 今日は 氷に 閉じ込められた 秋の名残が 模様になって 池に浮かんでいました とてつもなく淋しくなった さまよえる魂を 捕まえるように 池の周りを ぐるぐる まわってみました
View Articleかげ
日射しが弱ってきて かげの色まで 淡くなっちゃって かげの量は 増えちゃって 空はこっぽり 広がっていて 小鳥が 縦横無尽に 遊んでる 小鳥のかげが 私のかげに 重なって 一つになって 抜け出していく 縦横無尽に
View Article帰巣本能
帰る場所というのは なんども 確かめた場所だった 上からも 下からも 横からも 斜めからも たくさん眺めて よくよく見知った場所だった 少しずつ 変わっていることさえ わからないほど 眺め入っている 場所だった でも 変わらないことが 一つある そこに帰りたいという 私の気持ち
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