八月の水母が満月に集う
おおかたは天で悪事を働いて
星の神さまに見放された
哀れな星の残骸の
溜め息でできている
八月は流れ星の月間でもある
北へ南へと星が流れ
そのたびに水母たちは
オーとため息をつくのである
おおかた天の仕事をさぼったとか
嘘も方便とブイブイならして
束の間の私欲におぼれた輩に違いなく
ごく稀に極彩色に輝くやつは
誰かをかばおうとして
星屑になったに違いなく
あれも明日になったら
この海原で一緒に流れ星を見る
水母になっているに違いない
そうやって身を乗り出して
空を仰いで
やわらかな水母の体は時々砕けて
海の真珠になる
いつかは天道さまの所へ帰りたいものだと
新参者がものを申せば
中堅どころが眉をしかめて
大御所などは泣き出す次第
おまえ達 まだそこにいたのかと
天道さまがチラリと見下ろしたなら
へい これでも一生懸命海中を掃除してきましたのさと
嘘に嘘を重ねる輩がいて
天道さまはそんな輩にはいっとう優しいお顔で眺めたあと
ほんとうに懸命に働いた水母だけ選ばれて
天空に戻してやるのが慣例なのだ
残った水母たちが
ああ今年も掬われることがなかったと
泣く泣く家路につく頃
この満月もかけ始め
あたりには土用波が立って
また一年を過ごす浜辺へと水母を誘う