繭の中
何かが変わると 風が告げていた 何かを変えたいと 風が告げていた けれどもどうか 外からじゃなくて うちからの声を 大切にしてちょうだい 繭の中で 今まで集めたものを 温め直して ほら 生まれ変わりたい 形に育ててご覧 大丈夫 あなたの中には すべてがそろっている
View Article雪中向日葵
最初のこぼれ種の 次の花の種の その子どもだから ずいぶん 遅くに咲いた 霜が降りるまで ずっと 畑で咲いた 霜が降りたあとも どことなく きいろを残した 守人になった
View Article雀
たくさん着込んでも がたがた震えている私の横で 雪をかき分け 餌を食べる雀は素足 ほとんど無口で 頭を上下に動かしたり 首を左右に振って 懸命でした この足跡だって 新雪の時についたものが そのまま凍ったもの 手で触っても ガチガチなのです もうすぐ春が来るからね 春が来たら うんと楽になるからね もう少しだからね 頑張ろうね
View Article茨の城で
私の小さな心の扉を開けて あなたは私の心に 入ってきた 雪が降る 寒い昼下がりに 戸惑いと 喜びが 混じり合って 入ってきた 茨の城をくぐってきた だから 満身創痍だ そうなると 思っていた そうはならなかった 私は知っていた 嬉しいと 素直に喜べば 心に春が来ることを 私が 茨の城に 道を作り この心の 扉を開けて あなたを 出迎えたことを
View Article仄かな予感
ほのかに ほのかに なにかが はじまろうとして いる そのことに すなおに なれなくて すこしだけ おびえている ほのかに ほのかに おもいだす そうであっても すなおになれた そのときのこと がんばった そのときのこと だいじょうぶ いつだって ひとりぼっちじゃなかった いつだって ささえて くれる ひとがいた ほのかに ほのかに はるが くる
View Articleさん
その日 私は白鳥に会いに行って キジが飛び立つのを見ました 菱形を長く伸ばしたような姿で 飛んでいきました その日 私は銀行に出かけて チョウゲンボウが飛び立つのを見ました 鋭く切り裂くような円弧を描いて 飛んでいきました その日 私はなかなか寝付けなくて ミミズクの鳴き声を聞きました 闇夜に深く響いていました ごろすけ ほーほー いち に さん 私は思わず数えました 何かが 開かれていく...
View Article食物アレルギー
豚汁と おしるこ どちらが 犯人でしょう 明らかな 原因があるときもあるけど わからない時もあるから ね お薬 出しておきましょう たくさん眠くなるでしょう 春まで 冬眠しようかな ただひたすら 眠ろうかな
View Article雁風呂
雁は北の国からこの国に渡る時 木片を口にかみしめてきます 海上で疲れたら その木片を海に置き 一夜羽を休めるのです 雁たちは奥州は外の浜に降り立つと その木片を浜辺において 冬を過ごします この国での冬ごもりが終わって 北の国に帰る時 雁たちは再び外の浜の木片を拾って 長い海上の旅に出ます ですから 拾われなかった木片の数だけ 故郷に帰れなかった 雁がいたことになります 奥州の人はこの木片を集め...
View Article松本一本ネギ
寒さに耐えたくて 体にお砂糖を作った 寒ければ 寒いほど 甘くなるんだ 寒さに 衣はボロボロになっちゃったけれど 中は軟らかくて 濃くって 美味しいよ まっすぐ伸びちゃ 短足になるからって 寝かして 植え替えられて 春を待っている 僕は 松本一本ネギ 葱坊主だって 立派なんだよ
View Articleライダー
人はだれでもライダー 行きたい場所に 生きたいスタイルで 駆けていい 時代にのって 風にのって 時にのって 駆けていい 夕焼けの浜辺にでたら おおきな声で こう言うんだ すてきだよ ここまで走らせてくれて ありがとう
View Article陽炎
濃くなった影 小さな陽炎が 真昼の夢を運ぶ 両手で それをすくって じっと見る その朱き血潮 この手で 私はつくる この手で 私は抱きしめる 夢のかけらの なんと 騒がしく 心の臓を 駆けゆくことだろう 濃くなった影 大きくなった陽炎が 真昼の夢を運ぶ
View Articleはち
お母さん ここに蜂がいるの 少女は母親の袖をひく 危ないから 離れなさい! 母親の目が三角になる お母さん ここに蜂がいるの 見て 少女が指を指す 母親が振り向く あ ね 蛙さんのお口の中 蜂がいるでしょ 少女が得意そうにする よく気がついたね! 凄いよ! 母親が少女を褒める いつも見てたんだよ いつもね 少女が笑った
View Article水族館
日本語だと 水の仲間の「館」なんて立派な言葉になるのに 英語じゃ 水族館も 水槽も Aquarium 水族館という言葉を 発明した人は 竜宮城を 知っていたから お魚王国に 水族館って 名前をつけたのかしら ※ 水族館という言葉の初出は1897年のようです。水族館という言葉の前は水族放養場というお名前だったり、いろいろだったようです。...
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