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月虹
追憶の 弱い光をたどって 丘に立つ たしか あの辺りに たんぽぽは咲いていて 無邪気に笑っていた はずだった 日没前の朱く燃え立つ 太陽に 絮(わた)は真白に 輝いて わずかな陰影は 七色だった はずだった 今夜22時 下弦の月の 弱い光に 虹が架かる 月虹という名の あなたの瞳に似た 白の虹が かかる
View Article蛍光灯
青く灯った 黄昏の空に みどりの光 ともします 誰が名付けたか 蛍光灯との名の 一年中みどりの ほたるのひかり 巣立っていった 卒業生 新たな門出 に 蛍の光 窓の雪 良きことの 降り積もりたまえ 青く灯った 黄昏の空に みどりの光 今夜もかわらず 灯っています
View Article於ける 四柱神社
願いごとよりも 鳩に会いに行くんだ あいにく パンを上げるおばさんは 自転車で去ったあとだった 鳩に会うのも 願いごとのうち だった 四柱の神さまが 笑っていた
View Article旅立ちの糸
あちらこちらに 蜘蛛の糸が飛んで いきます バルーニング といって 子蜘蛛たちが 新天地を目指して 飛び出す 旅立ちの糸です 気に入った場所が見つかったら お手本もなしに お家を作ります どの子も 新米のはずなのに どの子も キレイなお家を 作ります
View Article相思花
彼岸花の異称 相思花 花の咲くときに 葉はなく 葉のあるときに 花はない との故についた名という その葉を 撮りたくて 春の田に入る まだ農夫たちの まばらにあるだけの 畦に 相思花の 葉は 花からは想像できない 地味な装いで 花を思って 佇んでいた
View Article風は西から
風は西から 気ままな旅 見晴らしの良い 丘に立ったら 口ずさめばいい そのことの 名前 そのことの 憂い そのことへの 感謝の ことば 吹かれるまま 口ずさめばいい わたしは 生きている
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